ゲームを生きる

 先週リアルタイムで配信を見られなかった、ブルボン小林×さやわか「シン・ゲーム論-僕たちにとってゲームとは何か【さやわか式☆現代文化論 #34】」(2024/4/10配信)をやっと見終える(延長×2で5時間50分もあった)。

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 ここ数年間、ずっと何もしてこなかったぼくもブルボン小林、そして、長嶋有さんの活動、というか作品は読んでいた。Twitterを追いかける、とまではいかない、Amazon楽天ブックスのお気に入りに入れておくぐらいの距離感。
 さやわかさんのことは、ほとんど知らない人だった。“ゲンロン”界隈で執筆や登壇をしている人、ぐらいの認識。
 少し生き返ったぼくが、先日ふらふらとネットをさまよっていたときに見つけたのが、この配信だった。ほんの少しためらいはあったけれど、1,485円+110円+110円の視聴料(シラス非会員)を払った。

 冒頭の会話で、ブルボン小林長嶋有)さんが1972年生まれ、さやわかさんが1974年生まれ、つまりものすごく同年代だということを知る。
 この「同年代」ということが、ブルボンさんが最初に話題に挙げた『ことばの意味』(平凡社ライブラリー)の著者(著者の一人である長嶋善郎は、ブルボンさんのおじさんらしい)略歴に、なぜ生年や生地、学歴、専門分野だけではなく、生まれてからどこに移住し、どんな方言などの言語文化下に自分が置かれていたかを紹介してあるように、言語学者にとっての言語体験(経歴)と同様、今回のお二人の話を聞くうえで、ゲームプレイヤーにとっても大切なことだったと思う。もちろん、どんなハード(ゲーム機)で、どんなゲーム作品を遊んできたのかは言うまでもなく。

 ブルボンさんが、『影の伝説』(1985・タイトー)を例に、番組前半、しきりに主張していた「ゲームは所詮プログラムでしかなく、そこで感じられたものは、すべて錯覚なのだけれど、ときに起こるプログラムの意図しない体験ができたとき(『影の伝説』でいうところの、敵の手裏剣がどこから飛んでくるのか毎回違い、クリア寸前に死んでしまう)、その自分だけの偶然、個別性のある作品が好き」という意見には、とても交換が持てた。うまく言えないけれど、ブルボンさんが言う「プログラムの意図しない」というのは、いわゆる“バグ”とか“チート”と呼ばれるようなものではない。不意打ちというか、東浩紀にとっての「誤配」。


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 この番組のキーワードは「ゲームを生きる」という点だと思う。そして「『生き直す』(ことができる)と体験こそがゲーム」ということ。
 最近、マンガやアニメにありがちな「異世界」という設定も、ゲームのもつその特徴を踏襲したものであって、誰も「未来」に希望をもてなくなったこの21世紀にあって、みんな「異世界」(で生き直すこと)へ希望を求め始めたというのが、ブルボンさん達の合意点だった*1。五部林も小学生時代から『転生したらスライムだった件』をずっとNetflixで観ているし、マンガも読んでいる。

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 番組のページで事前に質問フォームが設けられていたので、ぼくは、

 40代、PS5ユーザーです。
 ゲームが「できるとき」と「できないとき」って、本が「読めるとき」と「読めないとき」と似ている気がします。ゲーム(及び本を)「する・しない」ではなく「できる・できない」なんですよね。
 時間に余裕がある・なしではなく、どちらも「したい」のに「できないとき」が周期的に訪れます。
 お二人にはそんな経験ありませんか?

 と書いて送っていたら、なんと、番組で紹介され(4:26:18)、そして、さやわかさんもブルボンさんもとても同意していただいてうれしい限りだった。「ぼくはすごいわかります」「この感覚って、むしろゲームしない人にわかってほしい」(さわやかさん)とまで。
 あー、やっぱりそう感じてくれる人もいるんだ、と思えただけでも、この配信を見て良かった。

 そう、最近のぼくはいっさいゲームができないでいる。すごくしたいのに。
 『グランド・セフト・オート オンラインGTAオンライン)』(ロックスター・ゲームス)の「チョップ・ショップ(サルベージヤード強盗)」アップデート(2023年12月)以来PS5は起ち上げていないし、ほとんど廃人のようだった年末年始も、『eBASEBALLパワフルプロ野球2022(パワプロ)』(コナミデジタルエンタテインメント)で、ひたすら「栄光ナイン」モードをPS4でプレイしていたぐらいで、その後、いろいろと忙しくなった1月中旬以降、約3ヶ月ぐらいはほんとに何もゲームしていない。

 ちなみに『GTAオンライン』の前は、『レッド・デッド・リデンプションⅡ』→『レッド・デッド・オンライン』(同じく、ロックスター・ゲームス)をプレイしていた。だから、番組内でブルボンさんが「愛馬とともに崖を転がり落ちて、命からがら愛馬のところに寄っていったら『皮を剥ぎますか?』という選択肢が出てとてもおもしろかった」というエピソードがとても笑えた*2

 そして、ここ数年間は、本もほとんど読んでいなかった。
 でも、先週、このブルボン小林×さやわかさんの配信を見始めてから、すごく本が読みたくなり、さやわかさんの『ゲーム雑誌ガイドブック』(2019・三才ブックス)を読み始めた。そこには懐かしいゲーム雑誌が並んでおり、「ファミコン通信」の“ガバチョ”(雑誌内通貨)を集めていたことや、ただ、ぼくは「マル勝ファミコン(正確な表記は○内に「勝」)」派だったことや、40年ぐらい前の少年時代のこと、友だちとのこと、親のことを思い出したりもした。「ファミリーコンピュータmagazine(ファミマガ)」の元編集長・山本直人さんが書いた『超実録裏話 ファミマガ 創刊26年目に明かされる制作秘話集』も読んでみたくなった。
 ぼくにとってゲーム歴は、やはり読書歴と並んで、今の自分をかたちづくっているし、いろいろな「体験」をさせてくれたことも思い出した。

 ちなみに、この4月で中学生になった五部林のおもなゲーム歴は(ぼくの知っている限り)以下の通りだ。

●小1(6才)の2017年8月にNintendo Switchを購入し、それから現在まで横断的にプレイしているみたい(保護者管理アプリ「みまもりSwitch」より)

・『スプラトゥーン2・3』(任天堂
・『フォートナイト(Fortnite)』(Epic Games
・『Minecraft(マインクラフト)』(Mojang Studios)
・『大乱闘スマッシュブラザーズ』(任天堂
・『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』(任天堂
・『エーペックスレジェンズ(Apex Legends)』(エレクトロニック・アーツ
・『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』(任天堂
・『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』(任天堂
・『スイカゲーム』

●小4(9才)ごろから、Cの弟・Tくんに古い「iPad Air 2」(16GB)をもらってからは、

・『妖怪ウォッチ ぷにぷに』
・『にゃんこ大戦争
・『ブロスタ』
・『荒野行動』
・『ONE PIECE バウンティラッシュ』
・『ダダサバイバー』
・『モンスターストライク

などを、ストレージがめちゃくちゃ少ないなかで、ダウンロードとアプリ削除を繰り返し遊んでおり、

●先日(2024年2月末)、中学の入学祝いに購入した「iPhone13」では、

・『プロ野球スピリッツ
・『MLB Rivals』
・『LINE:ディズニー ツムツム
・『ハイキュー!! TOUCH THE DREAM』
・『モンスターストライク
・『eFootball2024』

をさっそく128GBあるストレージでふんだんに活用してプレイしているみたい(iPhoneの「スクリーンタイム」より)。

 2017年8月以来、今に至るまで、もちろん、五部林とはゲームのプレイ時間、遊び方については、論争が絶えない。
 何度も何度もケンカした。『フォートナイト』に課金もたくさんした(させられた)。「誕生日祝いに何が欲しい?」と訊いたときも、ゲームソフトならまだしも「課金」(ただのスキンや武器)を希望されたことは、最初どう受け止めて良いのかわからなかったが、クリスマス、お正月などのイベントの度に「課金」を言われていると、こちらの感覚も麻痺してしまい、カタチのないものをプレゼントすることへの抵抗は薄らいでしまった。
 何度も「(Nintendo Switchのみまもり機能や、iPhoneのスクリーンタイム機能で)機械に縛られるのと、自分で時間を決めて遊ぶのとどっちがいい?」と、キツイ口調でぼくは彼に問うた覚えがあるけれど、年齢が上がるにつれて「機械」と答える彼の正直さというか、だらしなさは、明らかにぼくの血を受け継いでいるように思う。

 話を戻す。

 ともかく、先ほど見終えた、ブルボン小林×さやわか「シン・ゲーム論-僕たちにとってゲームとは何か」は、ぼくにとってとても刺激的な対話だった。
 おふたりの「声」も良かった。

 ブルボン小林さんがポッドキャストで「古賀・ブルボンの採用ラジオ」というのを放送していると知ったので、今度聞いてみようと思う。
 トーキョーにいなくても、オンラインでこういうイベントが「体験」できるのは「すごい時代になった」と、改めて感じた。

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■メモ(お二人の対談で取り上げられたゲームで、ぼくがプレイしたいと思ったのは、以下の作品)

・「ファミレスを享受せよ
・「アンリアルライフ
・「Milk outside a bag of milk outside a bag of milk
・「パラノマサイトFILE 23 本所七不思議
・「ザ・リワインダー
・「Slain

 「夜の世界」が「ゲームでもきちんと描かれるようになった」という、ブルボン小林さんの指摘が良かった。
 ほかに紹介された『ディスコエリジウムファイナルカット』も『Atomic Heart』も『Unpacking』も、ぼくは積ん読ならぬ積みゲーしているけど、『A Space for the Unbound 心に咲く花』は、ぼくもクリア済みでほんとに良い作品だった。

PS5版 A Space for the Unbound 心に咲く花

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*1:ちなみにブルボンさんが耳にした話では某メディアの「異世界」作品が最も売れているのは、愛知県・豊田市なのだそう。ほとんどの住民が某車メーカーに従事する人々が「『未来=(クルマ?)』に希望をもてなくなっ」ているのか、という考察はおもしろかった

*2:あと、ぼくもかなりヘタクソプレイヤーだから、その場面によく遭遇する「『EASYモードにしますか?』というゲーム側からの提案に腹が立つ」という、お二人のエピソードにも声を出して笑った