雨上がりの夕焼け

 病室に入ったら、母は、同じ病室の、同じく抗がん剤治療を続けている人の肩を揉んであげていて、なんだかおもしろかった。「お互いさまやからね。ヒヒヒ」と母は笑った。病室のみんな4人も笑った。
 今朝、母は全身に「じんましん」ができてたらしく、痒くて仕方なかったらしいけど、これは抗がん剤の副作用というわけでもないらしく、単に、昨日食べた魚が悪いんじゃないか、という医者の判断。ぼくが行ったときは、かなりマシにはなっていたけれど、ちょっと赤い発疹が残っていた。
 しばらく母と話していると、「うわー!」と母が声を上げたので「?」と思ったら、「見てみぃ、後ろ、すごい夕焼け!」と母が言うので、窓を背にして座っていたぼくが振り返ると、たしかに、すごい夕焼け。さっきまで強く降っていた雨も止み、西の空が赤く染まっていた。病室の人、みんなが窓際に集まってきて、しばらくみんなでボンヤリ空を眺めた。

 その後「ちょっと散歩しよか」と母が言うので、「一回、6Fまで行ってみたい」とぼくが言い、母とふたりで病院の最上階の6Fまで上がる(残念ながら、屋上には出られない)。そこにはまた違う風景が広がっていて、夕焼け空もとてもきれいだった。6Fは主に、呼吸器系、循環器系の病棟らしく、男部屋、女部屋が交互に並んでいた。そして、5Fにも行ってみた。5Fは泌尿器系、眼科など、さまざまな人たちがベッドに横たわっており、病院というところの世界を知る。