過信と自棄
昨夜は、その後、池田暁子『片づけられない女のためのこんどこそ!片づける技術』を読んだ。
ぼくは、これまで「ゴミ屋敷」になぞらえて、自分の部屋を「ゴミ部屋」と評してきたけれど、著者はその状態にある部屋を「汚部屋(おべや)」と呼んでいて、「なるほど、イカしてる」と思った。本書は、「汚部屋」から「お部屋」へまでの記録が綴られている。
正直、もう少し実用的な読み物を求めていたんだけど、実用書というよりは、手順書というか、心構えの書というか、気持ちの持っていき方の参考書というのか、そういった感じのコミック。でも、こういった収納術みたいな本は、たいてい家族持ちの家や部屋を対象にしてあるのだけど、本書は、著者の住む単身者の2K部屋を例にしているので(ぼくの部屋は1Kだけど)、大変わかりやすかった。
部屋を片付ける手順としては、まず、片づけの拠点となる「基地」を部屋の一部分につくり、部屋に散乱している細かいものや大切なものをとりあえず、そこに集めていく。そして、汚部屋を一気に片づけようとしても、途方にくれるだけなので、その次は、必要・不必要が明らかなものが多い「台所」から攻めていく…など、参考になる部分もあった。
今、まさにぼくも自分の部屋を「汚部屋」から「お部屋」へ変化させてゆく過渡期にいるわけだけど、「基地」づくり、「台所」から、など、この本を読んでいなかったけど、ぼくの攻め方はある程度正しかったのだと思い、安心した。
本書には「あなたの家は大丈夫? 『汚部屋』度チェックシート」なるものもあって、内容は以下のとおり。
当てはまるものに×印をつけてください。
□ フトンが水平に敷けない。
□ CDの中身が違ったり、入ってなかったりすることがよくある。
□ 家の中で真っ直ぐ3歩以上歩けない。
□ 5年以上、家に人を呼んでいない。
□ さっきまで手に持っていた物が見つからない。
□ 全巻揃えていたはずのマンガが何冊も見当たらない。
□ リモコンが行方不明で録画予約ができない。
□ 目が覚めた瞬間、あまりの汚さに正直ウンザリする。
□ 窓が開けられない。
□ お正月がつらい。
あなたはいくつ当てはまりましたか?
0〜1コ 「汚部屋」度 0%
「汚部屋」とは無縁なあなた、その状態をキープして。
2〜4コ 「汚部屋」度 40%
黄色信号です。出した物は所定の場所に片づけましょう。
5〜7コ 「汚部屋」度 70%
床が見えなくなるのも時間の問題。物を捨て始めて。
8〜10コ 「汚部屋」度 70%
ゴミ屋敷一歩手前です。ぜひ一緒に片づけましょう。
正直、つい先日まで、ぼくは9コ当てはまってた…。今はなんとか2コぐらい。
ただ、本書でいちばん参考になり、ぼくもこれからぜひ心がけていこうと思ったのは、「玄関先でブロック!」という技術で、「部屋に持って入った物をいつもそのへんに置きっぱなしにするから物がひたすら増えていく」という法則を打ち破ることで、ずいぶんと部屋の物は整理されていく。DMしかり、包装紙しかり、出かけて返ってきたときの荷物しかり。
ぼくは、正直、外出して(それは仕事だけじゃなくて)帰宅すると、外界の多くの人間と接したりしたことだけで、ほとほと疲れ果てていて、とにかく荷物とか着替えとか、そういうの全部後回しで、ひと息ついちゃうのだけど、いったん、ひと息ついちゃうと、もうそれらを片づけようなんて気持ちが起こるわけもなく、だからどんどん物が層を為していき、いつの間にか手もつけられない状態になっている…ということを繰り返してきたわけだけども、「玄関先でブロック!」という技術は、要は、持ち帰ってきたものは、すぐ整理する(捨てる)と、物がいつの間にか増えていくことは避けられる。
でも、なんというか、ぼくの場合だけかもしれないけど、本書を読んで、「片づけられない」っていうのは、自分への「過信」、そしてその真逆の「自棄」の積み重ねなんだと、改めて思った。
自分は後から(片づけることが)「できる」、他の人にとってはそうじゃないかもしれないけど、自分にとってこの物(ぼくにとっては本だったり、雑誌だったり、フリーペーパーだったり、チラシだったり)は必要なんだ、という過信。そして、ほんとはそんなのできやしないし、分不相応な物(「こころざし」とかも含む)ばっかり溜め込んで、結局、何もできなかった、という「自棄」。「片づける」ってことは、その「過去において立てた目標に関して、何もできなかった今の自分」を認めることになるから、片づけられないんだと思う。
だから、たぶん、片づけられるようになるには、(否定的な意味じゃなく)自分への過度な期待をしないこと、自分の基準をそれなりに保つことが必要なんじゃないかな、もちろん、もともと物欲やいろんなものへの執着が人より強いぼくには、収納術とか整理術とかいうのも大切だと思うけど。
ただ、本書を読んでいて、本書は「片づける技術」ではなく、要は「新装・増補版 「捨てる!」技術 (宝島社新書)」なんじゃないだろうか、とも思わなくはなかったけど。
でも、本書を読み始めてすぐの8、9ページの見開きにある著者の「自宅兼仕事場」の図。これは「汚部屋」としても素晴らしいし、ついこの間までのぼくの部屋のようでもあり恐ろしかったけれど、でも、そんなのとは別に、マンガの構図っていうのかなんというのか、ぼくがいつも例に出す、大好きな岡崎京子『私は貴兄(あなた)のオモチャなの (フィールコミックスGOLD)』に収録されている表題作のコマ割りと同じぐらいインパクトがあって、よかった。
「片づけられない女」も「片づけられない男」ももちろんのことだけど、片づけられてる人も、マンガとして、この見開きページだけは見てほしい。ドーンッッ、ってくるから。
- 作者: 池田暁子
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2007/04
- メディア: 単行本
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