ドギマギドギマギ

 銀行、といえば、先月の「母休暇」の間に、母の預貯金や保険や年金の相続手続きを、ほとんどやってしまって(あと、ゆうちょ銀行や入院保険の手続きなんかが残ってる)、この4週間の間に、実は、ぼくがこれまでの生涯で手にしたことのない、そして、母の遺産の相続なんてことがなければ、宝ぐじにでも当たらない限り、ぜったいにそんな金額がぼくの通帳に記載されるなんてことはなかったであろう、(ぼくにとっては)すごい金額がぼくの銀行の口座に振り込まれており、生活費をATMで少しずつ引き出す度に、これは普通預金の残高ではないよ! と、ドギマギしてるのだけど、そのドギマギを少しでも紛らわせようと、先日、M銀行の窓口で生涯初の「資産運用」の相談なるものを体験した。
 M銀行の支店に電話するときもそうだったし、相談時間を予約して、実際、銀行の窓口に行ったときもそうだったけど、銀行員の各人から、仕事で定期預金を扱う以外で個人的にこれまでに受けたことのない対応をされ、これまでには座ったことのない場所に案内され、お茶まで出てきて、名刺も渡されて、ドギマギを少しでも紛らわせようとして行ったのに、さらにドギマギすることになったし、それ以前に、このぼくが「資産運用」なんていうことを持ちかけるもの分不相応すぎるし、そもそも「しさん」なんていう響きがこわいし、だから「『お金のこと』で相談したいと思いまして…、」とか、うつむきながら言ったりしてた。
 対応してくれたのは、その支店の「お客様相談課長」なる男性と、AFP2級ファイナンシャル・プランニング技能士なる若い女性で、いろいろと相談に乗ってくれ、というか、ぼくは、投資信託とか変額個人年金とかの金融商品の説明をしてくれていた「お客様相談課長」の話をおもに聞いていただけなんだけど、あるところで、その「お客様相談課長」さんが、ぼくと同い年だということがわかり(というか、銀行側は、もう前もって、ぼくの生年月日から住所から、おそらく預金がどれだけあるかとかなんてわかってたんだろうと思う)、彼は、そういう同級生視点で話してくれ、ぼくもまた同い年だということで話しやすくなったりもしたんだけど、30歳のときに結婚し、3歳と1歳の子どもがいて、社宅に住んでいるらしいという「お客様相談課長」さんは、例えば「わたしたちが就職のときは就職氷河期でしたよね」とか、「わたしも独身のころは、一切貯金なんてしませんでしたよ」とか言ってくれるのだけど、たぶん、彼とぼくとでは、もうすでに彼の「お客様相談課長」と、ぼくの「事務」っていう、肩書きで違うし、就職氷河期に大手銀行に就職できて、ぼくと同い年で課長にまでなれた人と、高校中退で大学も留年して、さらに社会に出てからも転職と無職を繰り返し、貯金どころか年金も健康保険料も払えずにこれまできたぼくとでは、お金の価値とか、基準とかが違うんだろうなぁ、と、それが全然厭味じゃなく(ヒガミはあったかも)思えて、でも、その乾いて、さわやかさまで感じさせる「お客様相談課長」さんの口調で、結局のところ、ドギマギさはなくなり、これからCと相談し、そのうえで、ゆっくり相談に乗ってもらえればいいや、と思った。