宮さん、という呼び名
帰宅して、そういえば、と思い、「TV Bros.」(8/2号)を読み返してみたら、映画「スカイ・クロラ The Sky Crawlers」の公開に際して、監督の押井守がインタビュー(「押井守のアンタッチャブル」)に答えていて、そのなかで、彼は宮崎駿に対して、「崖の上のポニョ」に関して、次のように述べていた。以下、引用。【番号】の脚注も引用。
「宮さん【1】は飛行機(を描くこと)に関しては世界一上手いと公言している。でも、だからといって?本格的?な空中戦をやったことはない。なぜなら文化人としての建前があるので、空中戦をかっこよく描かないよう自主規制しているから。僕には幸い、そういう建前がまったくないので今回は本気でやった。コックピットに血も飛び散らせたし、そういう描写をしないと?本格的?にはならない。僕は映画のエンタテインメントというのは、つまるところ暴力とセックス【2】だと思っていて、それは宮さんも同じ。それどころか自分の血液をそれで充填しているようなものなのに、そこにまたも建前が立ちはだかる。その欲求不満が正体不明のバクハツとなって『崖の上のポニョ』を生んでしまった……というのが僕の説だ。
これはもう宮さんの妄想炸裂映画というか願望炸裂映画。あれは宮さん一家の物語で、宗介は吾朗くん【3】。今日も船の仕事があって家に帰れないと電話してくる彼のお父さんは宮さん自身。宗介の元気はつらつなお母さんはもちろん宮さんの奥さん。僕が願望といったのは、そういう忙しい父親をそれでも息子は愛し尊敬し、船長さんの帽子を被って陸からライト(発光信号機)でコミュニケーションをとる……宮さんがこうだったらいいなと思った世界が描かれているから。父親が一度も陸に上がらないのも象徴的だと思うよ。
今回、妄想映画になったのは、敏ちゃん【4】の介入がなかったから。自分で好きなように作っちゃったから。宮さんは本当に天才で、自分が創ってる映画についてまったく判ってない。まあ、自意識がないからこそ天才なんだけど。今回の話は支離滅裂で因果律も破綻してるけど、それでも冒頭の10分はまさに天才のワザ。本当に素晴らしい。あのイマジネーションと表現力は宮さんだけが到達できるもの。あのシーンだけには僕もひれ伏した」【1】宮さん
日本が世界に誇る大巨匠・宮崎駿のこと。これまでも押井は自分なりの宮崎駿の?真実?を口にしてきたが、その過激さゆえに活字になることはマレだった。今回、これでも抑えたくらいなんです、はい。【2】暴力とセックス
こう公言しているもうひとりの監督は『ロボコップ』『氷の微笑』等のポール・ヴァーホーヴェンで押井もファン。また宮崎駿の隠された暴力性について押井は「『ナウシカ』でも輸送機を墜落させて300人は殺してるし、『ラピュタ』でも一個師団、つまり1万5000人を殺している。アニメで血を見せていないから、みんな気付いていないだけ」。【3】吾朗くん
宮崎駿の長男・宮崎吾朗のこと。三鷹の森ジブリ美術館初代館長を務め、アニメ監督の経験はないにも拘わらず『ゲド戦記』を手がけたことで知られる。押井は彼とも親交があり『ゲド戦記』では対談も。「ゲドの歪んだ顔。あれは宮さんには出来ない」と擁護する部分も。【4】敏ちゃん
鈴木敏夫のこと。宮崎駿作品を把握する凄腕プロデューサー。押井とは『天使のたまご』以来の仲で『イノセンス』のプロデューサーも務めた。押井曰く「これまで宮さんの作品に物語があったのは昔は高畑(勲)さんのおかげ、いまは敏ちゃんのおかげ」だそう。ちなみに押井キャラの最高峰『パトレイバー』シリーズの後藤隊長は、この鈴木敏夫が一部モデルに。後藤隊長ファンは複雑な心境……。
「ポニョ」が押井守言うところの「妄想炸裂映画」あるいは「自意識がない」「天才」が創った映画という意見には、ぼくも大賛成だし、だからこそ、ぼくは評価する。
ぼくがさっき「宮崎駿作品が、物語の原初、アニメイションの原初、創造の原初に戻ってきた」と書いたのは、そういう意味でもある。
でも、「願望炸裂映画」だというのは、ぼくには知りようのないことだし、なんとも言えない。ただ「船の仕事があって家に帰れないと電話してくる彼のお父さんは宮さん自身」、「父親が一度も陸に上がらないのも象徴的」というのは、うなずける部分もある。
父親が乗ってた船の名前がたしか「小金井丸」だったから。小金井というと、スタジオジブリがある場所(東京都小金井市梶野町一丁目。ぼくはジブリのすぐそばにある劇団に勤めていたことがあった)だしねー。むー。
押井守は「冒頭の10分はまさに天才のワザ」と言ってるけど、え、そうだったのか? 10分しかなかったのか?! と、ぼくは驚いた。ずっと上にも「冒頭30分」って書いてきてたけど、ぼくはそれがすごく長く思えていたんだと、この記事を読みながら思った。
いや、でも、「頭でっかち」を代表するというか、それはそれで素晴らしいのだけど、その押井さんとぼくの意見が合うなんて、これもびっくりした。そういう意味でも、やっぱり「ポニョ」の冒頭(10分でも30分でもよいけど)は、すごい表現なんだな、と改めて認識。
それから全然関係ないけど、昨日読んだ島本和彦『アオイホノオ 1 』巻末の島本和彦×庵野秀明(大阪芸大の同級生)対談でも、庵野英明が宮崎駿のことを「宮さん」と呼んでいた。そういうものなんだ、と思った。
ぼくにとって「宮さん」は、土田世紀『編集王』に登場してた宮史郎太なんだけど。
あと、そうだ、「ポニョ」の感想で付け加えるなら、宗介の母・リサ(声:山口智子)の存在は、やはり大きいし、彼女が介護職(福祉職)だというのも、それが意味するものを考えたりした。そして、その職場(デイケアサービスセンター「ひまわりの家」)にいる利用者が女性ばかりだということも。これはよく指摘される「宮崎作品のなかの女性」というものだけではない、何かを含んでいると思うんだけど。
それから、もし、ぼくに子どもができたら(ぼくの子どもだというだけで、ちょっと気の毒なんだけども)、ぼくやCのことを、この作品みたく名前で呼ばせたいんだけど、それはきっとCが猛反対するだろうな、と思ったりした。もちろん、その子どもが呼びたい方法で呼んでくれればいちばんなんだけども(ただ、パパ/ママは、ぜったいに禁止する。ぼくはそれを「きもちわるい」と思う。呼ばれる側にだって選ぶ権利はある)。
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さて、これから、オリンピック、野球、韓国×日本、見つつ(今、7回で2−2)、寝ます。
今日は良い休日だった。