あの走り、あの口の結び方、あの表情

 「崖の上のポニョ」の感想。
 冒頭の、クラゲの増殖映像からして、ぼくはもうすでに泣いてた。なぜかはわからない。
 そして、それから何分間だろう、ほとんどぼくは泣き通しだった。最高潮の泣きは、フジモトに閉じ込められていたサンゴ塔を抜け出したポニョが「宗介んとこイクー!」と、宗介の母・リサが崖沿いを運転する車を追っかけて、いもうと達(声:矢野顕子!)が変化した水魚の波(津波)に乗っかって一目散で走るシーン。あの走り、あの口の結び方、あの表情…「(未来少年)コナン」だ! と思った、のは、後になってからで、とにかく、ぼくはそのとき震えるほどに感動してた。鳥肌が立った。
 たぶん、それは上映開始後30分経つか経たないかのシーンだったけど、ぼくは、もうそこまでで、「ポニョ、最高」と思った。そして、メガネを上げて、ハンカチで涙を拭いていると、隣の席の男の子がポカンと口を開けて、ポニョが言うところの「目から水が出てる」ぼくを見ており、目が合った。そして、「見てはいけないものを見てしまった」というように、彼はすぐに目をスクリーンの方に向き直した。そりゃ、彼にとってみれば、冒頭で、すでに涙してるオッサンを目の前にして、もしかしたら映画よりも不思議な光景だったかもしれない。
 その後の作品の流れも、もちろん素晴らしかった。でも、ぼくにとってポニョは、この冒頭30分さえあればもうお腹いっぱいで、評価に値する作品だ。