思春期体験

 昨夜(ゆうべ)、寝る前に岩宮恵子『思春期をめぐる冒険―心理療法と村上春樹の世界』を第二章まで読んだ。
「小説を書くというのは、…多くの部分で自己治癒的な行為であると僕は思います」(『村上春樹、河合隼雄に会いにいく』)と語る村上春樹の発言を受けて、臨床心理士でもある著者は「作家が自分の内側にどこまでも入り込み、その中でメッセージを探し出し、それを物語として生み出していくプロセスと、心理療法の中で治療者との関係に支えられたクライエント(相談者)が自分の内側にひそんでいる自分自身の物語を見出し、その物語を生きていくこととは、どこかでとても似ている」と書き、本書では、村上作品に頻出する思春期的登場人物あるいは物語と、実際に著者が出会ったクライエントの具体例を挙げながら、(これまで読んだ範囲でぼくが受けた印象としては)実際の10代の思春期を論じるというよりも、年代にとらわれない、そもそもいったい人間の「思春期体験」とは何か? といったことを論じている。
 年代にとらわれない人間の「思春期体験」、というのは、要は、自らにとって「異界」であるもの「違う次元」と直視しなければならない状況が訪れたときに表れてくるものだと思う。
 そういえば、この間、「とり、本屋さんにゆく」で、『ダンス・ダンス・ダンス』を読んだ感想として、toriさんが「『僕』は三十四才。5年後に、再読だな。」と書かれていて、あー、そうだったんだぁ、ぼくはもう『ダンス・ダンス・ダンス』の主人公と今年で同い年になってしまうんだと、ちょっと感慨深くなってしまったけれど、『思春期をめぐる冒険』の「はじめに」で、著者は、自らにとって「異界」であるもの「違う次元」が迫ってきたどうしようもないときに、それを「意識的で現実的な努力で問題を乗り越えていけるのなら、それが一番いい」としながらも、「好むと好まざるとにかかわらず」「異界」であるもの「違う次元」「にまで踏み込まなくてはどうにもならない人がたしかにいるのである」とし、そこで「『ダンス・ダンス・ダンス』に登場してくる少女ユキは、このように否応なく次元の問題に関わらなくてはならない人のことを、自分を含め『お化け組』と呼んでいた」と紹介する。
 ぼくが、『ダンス・ダンス・ダンス』を読んだのは、15年ぐらい前になると思うけど、確かにこの少女ユキという登場人物は、印象深く覚えている。そして「お化け組」というネーミングも、これを呼んで思い出したし、当時のぼくは「あー、オレも『お化け組』かも」と思った覚えがある。

村上春樹、河合隼雄に会いにいく (新潮文庫)

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ダンス・ダンス・ダンス(上) (講談社文庫)

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ダンス・ダンス・ダンス(下) (講談社文庫)

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