ときが止まった場所―1
14時ごろ、寝屋川市K町の実家前着。
18才までぼくが育った場所、家。祖母がグループホームに入って誰も住まなくなったこの家に、これまでも何度か家の前までは来ていたけれど、数年前、伯母が家の鍵を変えてしまってからは、家の中に入ったことは今日までなかった。どれだけ荒れ果ててしまっているのだろうと思って、恐る恐る玄関の扉を開け、足を踏み入れた。
まず目に付いたのは、いわさきちひろの2003年のカレンダー。それが、この家に誰もいなくなった年だったということを示す。もう4年も経っていたのかと思う。
家の中は思ったほど荒れておらず、埃っぽい匂いに混じって「ぼくの家」の匂いがした。閉切られていた雨戸を開け、風を通す。ひんやりとした風が入ってくる。
Cに、「これが居間。みんな仲が良かった頃は、ここでテレビ見たりしてた」「ここは台所」「ここがお風呂」「ここが洗濯場」、2階に上がって「ここがぼくの部屋だったところ」…なんていうふうに紹介。Cはなぜかパシャパシャとデジカメで写真を撮っていた。
最後に入った応接間で、祖母がぼくからの手紙をまとめてあるノートを発見。封筒やら便箋やら葉書やらがペタペタと貼ってあった。祖母のコメントも付けられていて、ぼくはそのノートを見て、少し読んだ途端、ほんとにグッとこみ上げてくるものがあって、Cがいなかったら、わんわん泣いていただろうと思う。
来月13日に、そのころは仮退院しているだろう母といっしょにこの家から必要なものを引き上げにくる予定にしているのだけど、今日もその前段階として、いくつか持って帰れるものは持って帰ろうと思っていたぼくも、この祖母のノートを見た途端、なんだかとても力が抜けて、なんにもする気がなくなった。倉庫の中にあった植田まさし本(『おとぼけ課長』やら『かりあげクン』やら『すっから母さん』など)だけ母のために持って帰った。Cは、ぼくが中学のころにつくった彫刻刀で彫り上げた小物入れと、ぼくが幼いころ毎晩読みながら寝ていた「まんが日本昔ばなし」の薄いカラー本(30冊ほど)が欲しいと言ったので、それも持って帰った。
