キノコや亀も出てくるで
店での後半の話は酔っぱらっていてよく覚えていないのだけど、唯一この夜で印象に残った母の話は、Cの弟くんがコナミの下請けの会社で働いており、ずっと横浜に出向していたのだけど7月に大阪に帰って来るという話から出てきた話で、ぼくが小学5年生のときのこと。
当時は、ファミコンが全盛期を迎えていて、ぼくは母に何度も「欲しい」と頼んだけれど、ずっと買ってもらえなかった。でも、母も根負けして、その年のクリスマス、ぼくにファミコン本体とソフト「スーパーマリオブラザーズ」を買ってくれた。
そして、その直後の授業参観日の後、母は担任の先生に呼び出され「この頃、●●くんの様子がすごく落ち着きがないんですけど、何か心当たりはありますか?」と言われたのだという。母は「たぶん、ファミコンのせいだと思います」と言い、さらに「あの子は、わたしと決めた1日1時間という約束は破っていません。でも、明らかにイライラしてるようです。『死ね!』とか『あほ!』とか、今まで口に出さなかったようなことばも言ってます。ただ、わたしは今あの子にゲームを控えろと言っても聞かないと思うし、そのうちあの子自身が気づいてくれると信じています」と答えたらしい。
その後、ぼくは(自分がそう言ったことを覚えていないけれど)母に「おかあさん! 頭ン中でスーパーマリオの音楽が消えへんねん! 頭ン中でマリオが飛んでるねん! 頭がチカチカするねん! おかしくなりそう!」と訴え、母はぼくに「ふーん、そっか、そらあんだけゲームやってるもんな。そのうちキノコや亀も出てくるで」とだけ言ったらしい。そうしたら、ぼくは程なくゲーム時間を控え出し、週2、3日しかやらなくなった。
「そのうちキノコや亀も出てくるで」とだけ言った母、ぼくはやっぱり、この人を尊敬するな、と思った。ユーモアのセンスを兼ね備えつつ、子育て上手。
23時すぎ、閉店ともに店を出る。
ボーナスをもらったので、いつもは割り勘だけど、ぼくが3人分支払った。
母の運転で自宅まで送ってもらい、Cとぼくを下ろして、母はまたブーン、と車を走らせ帰った。
最近、呑むと、その翌日にはまったく記憶がなくなってる。年齢のせいかもしれないけど、たぶん、河島英五「酒と泪と男と女」的なものだと思う。「忘れてしまいたいこと」が多すぎる。

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