1年ぶりのカラオケ

 その後、ふたりのときだけしか歌えないカラオケに行こう! っつーことで、近くのジャンカラ(「ジャンボカラオケ」をそう略すらしい)へ。カラオケに行くのなんて、ぼくは相当久しぶりのことで、確か、去年のサッカーワールドカップの際にオレンジレンジの「ナーナナ、ナ、ナ、ナーナナ、ナーナナ、ナ、ナ!」ってフレーズを歌いたいがために、Cを無理矢理、武庫之荘のカラオケ屋に引きずり込んだ以来のことだ。
 Hくんとの「ふたりのときだけしか歌えないカラオケ」は、以前、知り合ってから何度か開催したカラオケ大会で、要は、Hくんはさだまさしを、ぼくは中島みゆきを歌いまくるというだけのコンセプト。Hくんの高音はとても素晴らしい。
 終電が迫っていたため、たった1時間という制限があったものの、その夜歌ったのは、Hくんが、さだまさし「主人公」(ファンの間で最も好まれているという名曲! アルバム「私花集〈アンソロジイ〉」等に所収)、その後、Hくんは「ふたりのときだけしか歌えないカラオケ」というコンセプトを無視して、別れた彼女との思い出のスキマスイッチの歌ばかり歌ってた(…まだ、未練アリアリ)。ぼくは、さだまさし「風に立つライオン」(アルバム「夢回帰線」等所収)「不良少女白書」「しあわせについて」、そして最後に、中島みゆき「エレーン」(アルバム「生きていてもいいですか」所収)。
 いやー、良かった。とても良かった。「エレーン」なんて、ほんと何年ぶりに歌ったかわからないぐらいなのだけど、「エレーン、生きていてもいいですかと誰も問いたい/エレーン、その答えを誰もが知ってるから誰も問えない」という歌詞(詳細はこちら)を歌っているとき、いや、叫んでいるときの悲しみの快感たら、ほんとに最近味わうことのない種類のものだった。ぼくは、この「生きていてもいいですか」という問いが、中島みゆきをすべて表していると言ってもいいと思うし、そこが何よりぼくが彼女に惹かれるところだし、小谷美紗子の「逆不偶感」にも通じるものだと思ってる。

「主人公」

詞/曲 さだまさし

時には思い出ゆきの 旅行案内書(ガイドブック)にまかせ
“あの頃”という名の駅で下りて
“昔通り”を歩く
いつもの喫茶には まだ時の名惜りが少し
地下鉄の駅の前には“62番”のバス
鈴懸並木の古い広場と学生だらけの街
そういえば あなたの服の模様さえ覚えてる
あなたの眩しい笑顔と
友達の笑い声に
抱かれて 私はいつでも
必ずきらめいていた

“或いは”“もしも”だなんてあなたは嫌ったけど
時を遡る切符があれば欲しくなる時がある
あそこの別れ道で選びなおせるならって…
勿論 今の私を悲しむつもりはない
確かに自分で 選んだ以上精一杯生きる
そうでなきゃ あなたにとても
とても はずかしいから
あなたは教えてくれた
小さな物語でも
自分の人生の中では
誰もがみな主人公
時折思い出の中で
あなたは支えてください
私の人生の中では
私が主人公だと

私花集〈アンソロジイ〉

私花集〈アンソロジイ〉

「風に立つライオン」

詞/曲 さだまさし

突然の手紙に驚いたけど嬉しかった
何より君が僕を恨んでいなかったということが
これからここで過ごす僕の毎日の大切な
よりどころになります ありがとう ありがとう

ナイロビで迎える3度目の4月が来て今更
千鳥が淵で昔君と見た夜桜が悲しくて
故郷(ふるさと)ではなく東京の桜が恋しいということが
自分でもおかしい位です おかしい位です

3年の間あちらこちらを廻り
その感動を君と分けたいと思ったことがたくさんありました
ビクトリア湖の朝焼け 100万羽のフラミンゴが
一斉に飛び発つ時 暗くなる空や
キリマンジャロの白い雪 草原の象のシルエット
何より僕の患者たちの 瞳の美しさ

この偉大な自然の中で病と向かい合えば
神様について ヒトについて 考えるものですね
やはり僕達の国は残念だけど何か
大切な所で道を間違えたようですね

去年のクリスマスは国境近くの村で過ごしました
こんな所にもサンタクロースはやってきます
去年は僕でした
闇の中ではじける彼らの祈りと激しいリズム
南十字星 満天の星 そして天の川

診療所に集まる人々は病気だけれど
少なくとも心は僕より健康なのですよ
僕はやはり来て良かったと思っています
辛くないと言えば嘘になるけど しあわせです

あなたや日本を捨てたわけではなく
僕は「今」を生きる事に思いあがりたくないのです
空を切り裂いて落下する滝のように
僕はよどみない命を生きたい

キリマンジャロの白い雪 それを支える紺碧の空
僕は風に向かって立つライオンでありたい

くれぐれもみなさんによろしく伝えてください
最後になりましたが あなたの幸福(しあわせ)を
心から遠くから いつも祈っています
おめでとう さようなら

「エレーン」

詞/曲 中島みゆき

風にとけていったおまえが残していったものといえば
おそらく誰も着そうにもない
安い生地のドレスが鞄にひとつと

みんなたぶん一晩で忘れたいと思うような悪い噂
どこにもおまえを知っていたと
口に出せない奴らが流す悪口

みんなおまえを忘れて忘れようとして幾月流れて
突然なにも知らぬ子供が
ひき出しの裏からなにかをみつける 

それはおまえの生まれた国の金に替えたわずかなあぶく銭
その時 口を聞かぬおまえの淋しさが
突然私にも聞こえる
エレーン 生きていてもいいですかと誰も問いたい
エレーン その答を誰もが知っているから 誰も問えない

流れて来る噂はどれもみんな本当のことかもしれない
おまえはたちの悪い女で
死んでいって良かった奴かもしれない

けれどどんな噂より
けれどおまえのどんなつくり笑いより、私は
笑わずにいられない淋しさだけは真実だったと思う

今夜雨は冷たい
行く先もなしにおまえがいつまでも
灯りの暖かに点ったにぎやかな窓を
ひとつずつ のぞいている

今夜雨は冷たい
エレーン 生きていてもいいですかと誰も問いたい
エレーン その答を誰もが知っているから 誰も問えない
エレーン 生きていてもいいですかと誰も問いたい
エレーン その答を誰もが知っているから 誰も問えない

生きていてもいいですか

生きていてもいいですか